| チベットにも不思議な話 |
| 地球号 |
| チベットはヒマラヤ・チベット密教・ダライラマで知られる、現在は中国の少数民族自治区です。海外旅行にあまり興味のない人でも、ヒマラヤ(エベレスト)のベースキャンプと言えば、標高が高い所と察しが付くのではないのでしょうか。ここでは歴史や文化に関することではなく、私が添乗員としてそのチベットで実際にあった不思議な体験を書いてみたいと思います。 もともと、私は不思議な体験をすることが多かったのですが、今から八年前にチベットからネパールの首都・カトマンズに抜けるツアーに同行した時に話しはさかのぼります。ツアーは成田からバンコク乗り換えでカトマンズに飛び、翌日にチベット自治区の首都・ラサに入りそこから5,000m級の峠を何箇所も超え、ヒマラヤのベースキャンプ(5,200m)に立ち寄り、国境を超えてまた陸路でカトマンズに戻る13日間の日程でした。 他の会社も数社が同じような日程が組まれているのですが、私の所属していた会社のみが3回ツアーが催行されました。その3回とも添乗員は私だったのです。これは、国境の検査官に「今年は3回だけ日本人のグループが来た。全部おまえだ」と言われたから間違いないと思うのですが・・・。 中国では、昔からお化けといえば「キョンシー」を思い出す方が多いのではないでしょうか。チベットでも同様にお化けといえば「キョンシー」が信じられていて、山の中に住む住民の住居では、キョンシーが入り込めないように、膝くらいまでと成人男性の顔ぐらいの高さに小さい窓を設け、大きな窓は作らないようにしています。実際には標高が高く風が強いため、そう言った自然との生活から生まれた建築様式だと思うのですが、その建築について聞くと「キョンシー」が入れないようにと答える人が多いのも事実です。始めてこの話を聞いたときは、チベット密教の発祥の地でありながらお化けを信じるなんてと不思議に感じたものでした。 そして、私が不思議な体験をしたのは、2回目のツアーのことでした。日程の中では一番標高の高い、ベースキャンプ観光を終え、ネパールとの国境の町・ジャンムーに向かう日のことでした。もともと、チベット自治区のラサからカトマンズまでの道は簡易舗装しかされていないのですが、その道をジープか小型バスで約7日間かけて移動します。もともと、雨や崖崩れですぐ通行できなくなるのですが、その中でもベースキャンプから国境までは、約3,000m程一気に標高を下るため、特に道路閉鎖が起こりやすいポイントです。私の同行したグループがジャンムーに向かう日も、雨が降っていて途中で崖崩れがあることを聞きました。そのツアーではマイクロバスを使っていたのですが、こういった場合はカトマンズから来たグループも足止めされているため、いつも部屋が足りなくなり早い者勝ちで部屋をとることになっていました。そこで、途中の村でジープを一台用意し、グループはガイドとゆっくりホテルに向かってもらい、私と体調の悪いお客様とで先にホテルに着くように手配をしました。そして、ジープがホテルに着いたのは、夕刻の4時頃でした。他のグループはまだ着いておらず、自分の必要な部屋数の鍵を確保することが出来ました。そして、私はグループが着いたらすぐにでも部屋に入っていただけるように、部屋割りをしていました。するとホテルマンが、この部屋に貴方が泊まりなさいと最後に渡されたのが、3階の部屋でした。しかし他の鍵を見ると、一つだけ2回の部屋が交じっていたため不公平がないようにお客様を同じ階にそろえるため、2階の部屋を勝手に自分の部屋に変えました。それから1時間半して、グループが到着し少し休憩を取った後、高山病で倒れたり重病人がよく出るコースを全員無事に終えたことを祝って祝杯と夕食を楽しみました。非常に盛り上がり11時くらいまでその晩餐は続きました。 私も、皆さんに解散を告げ、自分の部屋に戻りました。ほっとした安堵感から、いつのまにか寝付いていました。 ちなみにホテルは、中国側の国境のすぐ隣に立つジャンムー賓館で、近年に立ちなおしをしていますが、滝壷にの上に立つ絶壁のホテルでした。ふっと眠りから覚めたのは、深夜の12時半頃でした。ボーとする意識の中で聞こえてくるのは、滝に落ち込む水の音だけでした。しかし、目も開かないうちから何かの気配を感じ、少しずつ目を開きましたが何も視界にはなく、ほっとした私は身を起しました。何気なく枕のほうを振り返ると、一匹のアリがその枕の下から出てくるのが見えました。そして、何気なくその枕を上げると何十・何百とゆうアリがその枕の下で動いていました。びっくりして、うっすら明かりの中、枕もとの電灯をつけました。するとその電灯のすぐ下に数十匹の大きな蛾がとまっているじゃないですか。その光景の中、しばらく呆然としていましたが、その内ベットの足元で何もいない、正しくは見えない状態なのに「ぱた、ぱた、ぱた」と何かが動いている音がしだしたかと思うと、更にその音が大きく聞こえ始めました。怖くなったものの、どうしたらい良いか分からない私はただただその場で固まっていました。何十分も流れたような気がしました。するとその内、崖側にある窓が「ガタガタガタ」と大きな音とともに振動し始めました。更なる奇怪な現象になすすべもなくベットの真ん中に座り込んでいた私の耳に、次に飛び込んできたのはなんと言っているのか分からないのですが、ファーとでも表現したら良いのでしょうか。悲しげな女性の声らしきものでした。その声は、崖側のその窓の外側からのものでした。その声がだんだん近づいて来るのが分かりながらも、恐怖で動けない私の耳に次に飛び込んできたのは「トントン、トントン」とドアをノックする音でした。(7月31日UP分) |