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私は忘れない、あの恐怖の一瞬を。アルジェリアの地方都市での出来事。このツアーはアルジェリアパートの部分が少しきついこともあり、私は疲れていた。夕食を取り、もろもろの準備を済ませて、ベッドに体を横たえたのは23時を回っていた。明日は05時30分起床のため服を着てローファーシューズのみ脱いで眠りに入った。しかし、トイレのタンクから漏れる水音が気になって眠れない、そこで何を思ったのかトイレットペーパー丸ごと便器に押し込めたのだ。見事音は止まった、あたりまえのことだが、これが惨劇を生む。
ぐっすりと夢の世界に入り、何となく目が覚めてみると既に起床の時間、今朝は同時に朝食を始められるようにお客様に伝えてある。「やばい」飛び起きて靴を脱いである場所に足を下ろした。「ザボ!」 「ザボ?」あり得ぬ冷たい感触に思考が停止した。まだ新品に近いリーガルのローファーが波間に漂っていた。「水だ!」「洪水だ!」完全にパニクリ、くるぶしまで水がくる中、意味なく部屋を走りまくった。窓を開け、満天の星空を見てすべてを悟った。ここは建物の5階、南極の氷が解けない限り水没するわけがない。そうトイレの水である。部屋の電気をつけ、トイレのドア下部の小さな隙間から、黒部の黒四ダムの放水よろしく水が噴出しているのが見えた。トイレットペーパーを抜かない限り事態は打開しないドアを開けるとさらに流れ出す水、やっとのことで手を突っ込んで取り除いた。次はこの部屋から脱出である。この部屋は入るとすぐに階段を下りるようになっており、これが局所的水害を招いた要因であり、5階フロア-を救ったのである。
全ての荷物をまとめ慌ててレセプションに行くとホテルマンがびっくりした様子でこちらを見ている。あたりまえである、いきなり水害被災者が降りてきたのである。一方私は、壁にかけてある時計を見て驚いた、まだ0時40分である。アナログ式の時計を天地逆に置いてみると0時30の針の位置は05時30に見える、私は置き時計をさかさまに置いていたのである。少し安心した。たった1時間で・・。あの被災地が気になる。私は責任回避を図るため、被害者になることを決めた。「 WATER!」私の絶叫がアルジェリアの夜にこだました。
それから数時間後、ある地方都市の空港で、ぬれた靴を履いた添乗員がトイレットペーパーをごみ箱に捨てている姿が目撃された。アルジェリアはいまだ政情不安でツアーは再開されていない・・・・。
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